NPO法人 東京里山開拓団

東京の荒れた山林を児童養護施設の子どもたちとともに開拓し自然の恵みを活用するボランティア団体です

東京の荒れた山林を児童養護施設の子どもたちとともに開拓し自然の恵みを活用するボランティア団体です

目指すところイメージ

 目指すところ>代表の思い>未経験の壁を乗り越えて(2016年5月)

 

児童養護施設との食事会

まだ寒さの厳しかった2016年2月の夜、児童養護施設・救世軍機恵子寮の職員のみなさんと食事会を行いました。里山へは一緒にもう29回も行っていますが、都心で会食をするのは初めてでした。参加したのは機恵子寮さんから職員5名、東京ボランティア市民活動センターさんから職員2名、東京里山開拓団から会員6名です。

救世軍・機恵子寮さんとのご縁は2011年秋からになります。東京ボランティア市民活動センターの森さんに児童養護施設の紹介をお願いしたところ、大学の先輩でもある救世軍機恵子寮の高田さんをご紹介してくださったのです。当方の試みは荒れた里山を子どもたちと一緒に開拓・活用するという前例のないものではありましたが、高田さんはかつて千葉県の里山にある児童養護施設で働かれていたことがあり、最初からご理解いただいて今に至っています。

初めての懇親会ではありましたが、ずっと長い付き合いをさせてもらっているのでお互いに気取るところもなく、いろんな話が広がりました。途中、一人ずつ自己紹介と自分が里山でやりたいことを話してもらうと、いいアイデアが次々に出てきました。

・テントで宿泊
・実のなる木を育てる
・畑をつくる、自分で収穫して食べる
・中高生向け企画
・卒業生の居場所
・大人だけの懇親会
・電車での参加
・子どもたちによる料理づくり
・自由時間を心から楽しむ
・登山競走
・職員会議
・職員が子どもとゆっくり向き合う場
・施設を出るときの親子参加
・他施設への提供
・企業との連携、メンタル対策提供

後半からは機恵子寮施設長の山本さんもご多忙のなか駆けつけてくれました。山本さんには3回ほど直接里山開拓に参加していただいていて、「子どもたちが肩ひじ張らずに自然体になれる進め方がとてもいい」と褒めていただきました。


未経験の壁を乗り越えるために

懇親会の帰り道、私は機恵子寮さんとつながりを持つ前の状況を思い出していました。2009年の東京里山開拓団立ち上げ以降、会員は順調に増えて八王子市美山町の荒れた里山の開拓もいい感じで進められたのですが、肝心の提供する先については、いろんな児童養護施設につてをたどってメールや手紙を送ったり訪問したりしてみたものの、思うような反応はありませんでした。せっかくやる気を持って入ってきてくれた会員の気持ちも空回りしてしばらくすると辞めていってしまうような状況でした。

今から振り返って客観的に児童養護施設側に立って考えてみると、いくら思いはあっても実績のない無名のボランティア団体が荒れた里山を開拓するなんて、預かっている大切な児童の安全に責任をもって対応してくれるだろうかと慎重になるのも当然だったと思います。

そこにあったのは、高くそびえる「未経験の壁」でした。

これはボランティア活動だけでなく、一般の仕事でも同じことが言えると思います。大きな組織や既存の取組みであったら、組織の信用を生かして引き受けた仕事を担当することで未経験でも経験を重ねることは可能かもしれません。しかし、信用も実績もない立ち上がったばかりのボランティア団体にとってはそうはいきません。ましてや前例のない新しい取組みならなおさらです。

この未経験の高い壁を乗り越えるために、私たちが意識して行ったのはこんなことです。

①あらゆる接点をたどってキーマンにたどり着くこと:様々なつながりから何十人かの関係者、関係機関へのアプローチを重ねた結果が冒頭に書いたご縁につながっています。    

②あえて外部に頼ろうとせずできるだけ自ら試行錯誤すること:活動内容もあえて専門家の協力やノウハウ本に頼らずに自分たちで知恵を絞って一緒に作り上げてきました。それは、こだわりというよりは、里山で本当に価値ある経験というのは誰かから与えられるものではなく、自ら作り上げていくことにあると思えたからです。そんななかから未経験でも試行錯誤するなかで本物の経験と本当の思いが形作られていく気がしました。

③成功しようと失敗しようと信頼される行動すること:試行錯誤に失敗はつきものです。実際に多少の怪我をする子がいたり、途中で雨が降り始めて困ったりしたこともあります。ただ、子どもたちや施設の声を確認し 毎回参加した会員にアンケートを行い反省点やよかった点を確認・共有して、改善を心がけました。もちろん、施設側との事前調整や事後対応はしっかりと欠かさず行いました。


壁を乗り越える経験

今、参加するみんなが、かつて荒れ放題だった山林に自分の居場所や居心地の良さを感じてくれる理由は、おそらくこのような未経験の壁を自分たちの力で乗り越えてきたことにあると考えています。もし整備されたキャンプ場で確立されたアウトドアプログラムを行っていただけだったら、こんなふうに自由で居心地よく感じられたかどうかとも思います。それに自分たちの力で壁を乗り越えたがゆえにもっと改善していい活動にしていく伸びしろにも自信があります!

里山は関わり方次第で誰にとっても価値のある存在になりますが、特に児童養護施設の子どもたちは大変な体験を経て自分の家庭から離れて暮らしているだけに、自分たちの居場所には一層価値があります。あわせて、一緒に「未経験の壁」を乗り越えてきた経験は、18歳になると施設を出て自分の力で人生を伐り拓いていかなければならない子どもにとって、少しでも自分への自信につながる経験になればと願っています。    

もちろん会員にとっても「未経験の壁」を乗り越える経験は重要です。ボランティア活動というのは、人と人との信頼関係というのが中核にあります。どんなにやる気があっても、どんなにいい目標や計画を掲げていても、どれだけたくさん人やお金を集められても、それらはすべて信頼関係構築につながるものでなければ意味がないと思っています。

現代都市社会は、時代の流れや流行り廃りがあまりにも早く、また個人の置かれる環境も社会の荒波の中で変わり続けていきます。そんななかで、ボランティアとしての意志を持ち続けること、実行し続けることがいかに大変なことか実感してきました。

大切なのは、自分の意志で地道に継続すること、継続しながら自ら改善し続けること、改善し続けながら信頼関係を築き上げていくことです。    

2016年度は、東京里山開拓団にとってあらたな船出の年となります。当団体にとって2件目の児童養護施設との里山開拓が開始できる運びとなりました。1件目の経験とノウハウを生かせば、きっと2件目以降はさらに価値ある活動をさらに安全かつ効率的に運営することができるようになるはずです。また、直接関われないにもサポーターとして協力していただける新たな会員制度も近く設けます。

そして、組織運営としてNPO法人化して理事会運営や情報開示などを進めて組織として信頼関係を重ねながら取り組んでいけたらと思っています。里山開拓には次から次へと「未経験の壁」が姿を現します。その度に私たちは様々な立場の人たちを巻き込んで楽しみながら乗り越えていきたいと考えています。

    

                                       2016年5月 東京里山開拓団 代表 堀崎 茂

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